お坊さんたちを前に説法をしてきた。
ところは京都・花園大学経堂。教会を彷彿とさせる空間だ。
全国から60人ほどの臨済宗黄檗宗の僧侶が集まり、
「法話」の研修をする。その基調講演に招かれた。
今回の研修テーマは、『以語伝心』。ことばを以って心を伝える。
ボクも「伝える 伝わる」を演題にした。
ボクの講演前に、全員で般若心経を朗唱。
60の声が一つになると迫力満点。
そして、南禅寺派総長の蓮沼良直さんが挨拶された。
「佳き法話とは、よくわかる、共鳴出来る、救われていると感じさせるものだ。苦悩している方に一筋の光明を見い出せるものになれば有難い。以語伝心・・・体験に基づいたことばで語ってほしい」
今回も「伝える」と「伝わる」の違いについて、
事前にアンケートに記入してもらった。いくつかを紹介。
「そもさん!」「せっぱ!」禅問答のようでもある。
伝える~意図を持って、主体的に伝達する意志を感じる
伝わる~聴き取る能力によって、受動的に意図が伝達される
伝える~話し手側が一方的に話すこと
伝わる~聞き手側の心にしっかり届いて納得すること
伝える~自分の理解のみで話す
伝わる~自分も相手もお互いが理解出来る
伝える~言うだけ
伝わる~相手の腑に落ちる
伝える~一方的行為
伝わる~話し手と聞き手が一体となる
伝える~意識して行う行為(作用)
伝わる~意識を超えた働き(無作用)
伝える~自力
伝わる~他力
伝える~自分の意志
伝わる~他者との「ご縁」
伝える~話者からの視点
伝わる~受けてからの視点 言外の「心」が伝達する意を含む
伝える~こちら
伝わる~あちら
伝わる~ことばだけでなく、
相手の心持ちが自分にもあるかのように感じること
さすがに僧侶の皆さん。深い。
正解とか不正解というのではなく、
「伝える」と「伝わる」の違いを意識して常に考えていることが、
ひいては「伝わる」、おのずと「伝わる」。
控室の傍に、円覚寺管長の横田南嶺さんの色紙があった。
「信」の字をみつけ嬉しくなった。
信夫という名は、建仁寺管長の竹田益州さんにつけていただいた。
臨済宗にゆかりがあるのだ。
この書は、
「仏法の大海は、信を能入と為し、智を能度と為す。」
大乗仏教の大成者であるインドの龍樹( りゅうじゅ) が述べた言葉。
仏法という大いなる海は、「信」が無くては入ることができず、
「智慧」が無くては渡ることができない。
仏教は、長い歴史を通じて磨き上げられた英知が籠められており、
汲めども尽きせぬ大海のようなものだ。
いくら知識を積み重ねようとも、「信が無くてはならない」。
「信」とは、訳も分からないままに闇雲に信じることではない。
仏教は、凝り固まった先入観を持つことを、厳しく戒めている。
「信」とは、自分自身も忘れてしまっている先入観の殻が打ち破られ、「確かにその通りだ」と事実をあるがままに受け容れられることだ。
改めて佳き名をいただいたものと思う。